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*掲載した写真の大部分は「カミソリ文化伝承館 フェザーミュージアム」内の展示物を撮影したものである。当然、原著作権は同ミュージアムにある。不許複製。なお、写真についての説明はつけていない。詳細は同ミュージアムを訪問して「勉強」していただきたい。また、本文中、日本剃刀は鍛造製品であるが、安全カミソリ以降の製品は鍛造製品ではない。

岐阜県関市の「刃物会館前」駅近くには 3つの広義の「鍛造博物館」がある




 日本には多彩な地場産業(鍛造)に関係するマチが存在する。金属製品・刃物・カトラリーなどの鍛造由来の地場産業のマチといえば、新潟県燕市、兵庫県三木市、岐阜県関市、大阪府堺市などがあげられる。その一つが、「関の孫六」など刀剣類や「関の刃物」(SEKICUT)ブランドで知られる岐阜県関市だ。


関市に行くにはいくつかのルートがあるが、鉄道でいくなら美濃加茂から長良川鉄道で「刃物会館前」で下車すると刃物や刀剣のミュージアムに行きつく。「刃物会館前」で下車すると3つのミュージアムに徒歩でいくことができる。 関は歴史的には、約800年前から刀剣の鍛造・冶金(鍛冶)で知られている。発祥は「野鍛冶」からである。 日本刀の鍛冶職人の仕事を紹介する「関鍛冶伝承館」では日本刀製作の鍛冶の歴史、製造工程、それに「作品」を見ることができる。展示も充実している。




明治時代に入り、政府は反乱を恐れて廃城令、廃刀令を出す。刀のマチ、関もさすがに刀剣製作の仕事は激減し、包丁や鋏、ナイフ、日本剃刀などの生活用金属機器の製造に基軸を移す。そして、日本刀の鍛冶技術の伝統を受け継いだ刃物類(包丁・ナイフ・鋏・安全カミソリなど)の地場産業のマチとして今日まで発展してきた。もちろん、日本刀も造られてはいる。 さて、駅前の「刃物会館」は展示の他に関の刃物の直売所も兼ねている。毎年恒例となっている「刃物まつり」には日本中、世界中から何十万人という刃物ファンが押しかける。


「刃物会館前」で下車すると駅のホームから見えるのが「カミソリ文化伝承館 フェザーミュージアム」だ。このミュージアムは日本で唯一のカミソリ文化に焦点をあてたユニークなミュージアムである。展示物(約5000点)は、古今東西に目配せをした大変文化的にも価値のある企業博物館(フェザー安全剃刀(株))である。


カミソリ関連のコレクションはカミソリコレクターたち垂涎の的


 カミソリの歴史は人類がオシャレを覚えたころから始まる。主に男性の頭髪・髭を整える重要なツールとして石器時代からカミソリ(石刃カミソリ)は登場している。男性の髭は威厳の象徴であり武将(軍人)に限らず、一般人も髭の手入れは重要なマナーでもあった。  カミソリの素材はかつては固い石・貝であったが、金属類が主流に変わり、そのカミソリの切れ味の良し悪しで職人の腕が評価された。




 関の刀剣鍛冶産業は、前記したように明治期に入り、廃刀令で一挙にすたれた。しかし、刀剣の鍛造で磨かれた技は、すぐに包丁、鋏、ナイフ、日本剃刀などの製造に活かされ、美術品の域に達するものも多かった。 その後、薄い替刃の「安全カミソリ」が発明されてからは、個人利用の各種のカミソリが生産されるようになった。現在、市場では伝統的な手動式カミソリの他に、電動式のものも出回っている。また、日本剃刀は、剃る技術の難しさもあり、理容・美容業のプロフェッショナル用途へと変わっていった。



世界のカミソリ業界に革命をもたらしたのが、キング・キャンプ・ジレット(1855−1932 )だ。世界一のカミソリメーカーであるジレット社の創業者である。1901年にジレットは鋼鉄製の使い捨て替刃の安全カミソリを発明し、1903年に特許をとり、世界メーカーへの歩みを始めた。同時期にはイギリスの軍刀メーカーであったウィルキンソン・スウォード社が後のシックブランドにつながる安全カミソリを製造・発売した。ジレットブランドやシックブランドは現在では世界的なブランドに成長している。


関からスタートした和製ブランド「フェザー安全剃刀」


電動式を除けば日本の安全カミソリの業務用、個人用のメーカーとしては、20世紀に入り産声を関であげたフェザー安全剃刀(株)と貝印蠅裡下劼ともに有名だ。 フェザー安全剃刀(株)は、2000年に日本で唯一のカミソリ文化の 「カミソリ文化伝承館 フェーザーミュージアム」 を関市に開設した。このミュージアムの前身は創業50周年時(1982年)に社内に立ち上げた「カミソリ資料室」である。失われつつあったカミソリ関連の資料を国内外から集め、主に社内、業界内の国際競争力向上の製品開発に資するために設けられたものであった。そして、一般公開を前提にしたミュージアムを社屋新築時に開設した(2000年)。このミュージアムは実に歴史的にも文化的にも価値のある体系的なカミソリミュージアムとなっている。実物展示、映像展示など工夫されている。蒐集資料約1万点のうちから約5000点が展示されている。カミソリの歴史、トコヤの歴史、利用していた器具類など約5000点に及ぶ展示物が興味をそそる。 フェザー安全剃刀(株)の自社製品をほとんど目立たせず、中立的な展示コンセプトには感心させられる。その点が産業博物館としても傑出している。たかがカミソリ、されどカミソリ。一見の価値はある。同ミュージアムに展示されている内容をほんの一部だが写真でご紹介しよう(「カミソリ文化伝承館フェザーミュージアム」内外で撮影。不許複製)。 日本の鍛冶職人の伝統を踏まえた安全カミソリは、ジレット、シックなどの国際ブランドに伍して世界に羽ばたいているのである。因みにフェザー安全剃刀(株)は現在、高度技術を駆使したカミソリの他に医療用メス類も生産している。顕微鏡の世界でも通用する微妙な「切れ味」は、ドクターたちにとってはなくてはならない重要なツールなのだ。 遠く関の野鍛冶の伝統を継ぐ鍛造技術の精華は、近代技術に裏打ちされた医療用メスという新たな「刃物」に受け継がれているのである。





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